2023/05/25

Re arts Garden 有澤さんに聞く、画材リユースの物語

弁天通りを早宮に向かっていった住宅地の入り口にある、画材屋さんをご存知でしょうか?昨年6月にOPENしたRe arts Gardenは、不要になった画材を全国から無料で引き取り、次の使い手に安価で販売する「日本で唯一」の画材リユースショップです。 練馬の住宅街の入り口に、文房具屋さんでもなく画材屋さん。しかも、ショーウィンドウにはガラスの工芸品やランプ(!)といった骨董品が並んでいます。 いったいどんなお店なのでしょうか。代表の有澤さんにお話を聞きました。 

 

有澤紗生(ありさわさき)さん
Re arts Garden代表
美術大学の油絵科を卒業後、画材のリユースプロジェクトを立ち上げ。Re arts Gardenでは画材を無料で引き取り安価で販売するリユースショップ営業を中心に、若手アーティストへの無償提供や展覧会・発掘活動も実施している。

 

商売としてリユースを

有澤さんが画材のリユースプロジェクトを始めたのは2年前のこと。きっかけは美大生の頃に見た、たくさんの廃材が処分される光景を見たことでした。 

「美大の学生は、作ったものが嫌になったら新品でも捨てるんです。毎年ゴミ山ができて、 大学が廃棄する。もったいないなーとずっと思っていました。 卒業して、同期が院を出る頃、ゴミ問題が解決していないと聞きました。2年も3年も解 決していないなら、自分がやったらいいのでは?と思ったんです。」

学生の頃は、有澤さん自身が廃材を使って作品を作っていたそうです。 木やアクリル板といった支持体を廃材から見つけてきて、自分が持っている絵の具や筆、なにかしらの道具で製作をしました。 

「学生がバイトで働きながら作品に何万もかけられないじゃないですか。そんなときに、廃 材がたくさんあって、こっちの方がおもしろいんじゃないかと。これ使えそう!というのを見つけて、ゴミだけで進級作品を作ったりしていました。 」

ー商売にしたきっかけは?

「周りが困っていたんです。 私も画材をどうしようかなってすごい困ったし。そこの受け皿がないことに気がついて。 物々交換は結構やっていたんですよ。大学の中で、物々交換会として、集めて・散らして みたいなことをやっている活動家がいたり、いらないものを集めて展示をする人がいたり。 でも、表現の範疇なんですよね。リユースというよりは。 商売としてやるという人がいなくて。 商売としてやれば普通の人も買えるじゃないですか。そこがいいなと思って、自分の表現 方法の一環ではなく、商売にしました。 」

元々は大学に対してアプローチをしたいと、教授や母校とやりとりをしながら活動をしていました。仲間も就職して有澤さんが活動を引き継ぐことになったとき、ここにお店を開くことになっ たのは、仲良しの不動産屋さんからこの物件を勧められてのこと。 

「それまで練馬という土地には来たことがなくて。 仲良しの不動産屋さんに『めっちゃいいとこがあるよ。なんでもやっていいよ!』と言われて、なんでもやっていいんですか!?って(笑) 改装は自分でやりました! 」

 

思い入れのストレージ

画材のリユースに取り組んでいるところは調べても他になく、引き取りの依頼は関東圏を中心に 北海道から沖縄まであるのだそう。また意外にも(?)、練馬の近隣に住む方々からの引き取りも多いようです。 

「先月は近所の絵描きさんが『もう絵をやめるから』とずっと繰り返し通ってくださいました。ご近所の方にも、けっこう絵描きさんがいらっしゃいます。『道を散歩していたらよくわからないけど見つけた』、『僕も絵を描いているんだ』という方が多いです。 めちゃくちゃ有名、大御所の方もいらっしゃいますよ。 元々引き取りは、大学を卒業した後の引っ越しで画材が余っている若い人向けに始めました。 でも、絵をやめるとか、高齢の方にも需要があることがやりながらわかってきて。今は質 の良い時代の画材をご年配の方からいただいてきて、比較的若い層に販売するという流れができています。 」

心ときめかせて手に入れた道具や、長年一緒に過ごした道具は、いざ手放そうと思 ってもなかなか踏ん切りがつかないものです。でも、同じように大切に使ってくれる人に渡るな ら、前向きに考えられるかもしれません。Re arts Gardenに集まった画材の一つ一つに、引き取りをお願いした人の思いが詰まっています。 

「日本画の材料を学生さんが卒業してからも10年くらい持っていて、『使ってくれる人がい るならあげたい』と。『また自分が欲しくなったらここに買いにきます』と、言ってくれ たんです。 画材って、ご本人的には捨てられないものなんですよね。ストレージみたいな感じで使っ てもらったのが、一番最初のスタートでした。 ショーウィンドウに並んでいる骨董品は、パステルを描いていた90代の方がモチーフとし て集めていたものなんです。『絵を描く人のところに渡ったら嬉しい』というお話で、 200点~300点くらいあったので、一部は知り合いの絵画教室に思いを託しました。 」

そんな画材を求めに来るのは趣味で始めたい人、近所の人、美大の学生と様々です。 

「絵を始めたいという方も意外とパラパラいらっしゃって、全部揃えると高いからと、一緒 に選ぶこともあります。子どもが絵を描くからと、バラ売りの絵色鉛筆を買っていく近所 の親子もいらっしゃいました。 学生さんや受験生はガチですね。池袋あたりの予備校の方も。 若い人がここを知ってくれたらずっと面倒を見られると思っているので、『よろしくね。いらなくなったらちょうだいね!』と伝えているんです。 この流れが長いことやっていれば形になるから、頑張ろうと思っています。 」

 

リユースの輪の広がり

Z世代がサステナブル・ネイティブと呼ばれる昨今、有澤さんと同じような問題意識を持 って活動する人たちとの輪が広がっています。 

「ここで影響を受けて、木材を加工して渡す活動を始めましたという子が一昨日連絡をくれ て、話をしました。 結構若い人・大学生の間でも、自分の大学の物をなんとかしようという意識が高まってい て。 木材の廃材置き場がすごいんですよ。そこでどうにか引き渡しができる仕組みを作って芸 大の卒業制作にした人が去年いて。廃材置き場に看板組んで、『木材市場』みたいにして、そこでアートするみたいなことですが、結構評価が良くて。 そんな輪が広がっています。 からんで、みんなつながっていきたいなと。 教授や大学に声をかけながら、やっています。 」

最後に、お店の今後の展望についても伺いました。 

「今は木枠が中心になっているオンラインショップを整備して、ここに来られなくても画材 が手に入るようにしたいです。逆に、店内は画材を買いにくる以外の人も来られるよう に、展示スペースも設けようと思っています。 」

読者の皆さんのお家にも、捨てるに忍びなく眠っている画材があるのではないでしょうか。 使わなくなってしまった画材引き取ってもらいながら、誰かが託した新しい画材との縁ができる のがRe arts Gardenです。 気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。 

 

 

営業情報:

Re arts Garden 練馬店

東京都練馬区練馬2-33-18

営業時間:金・土・日 12:00-18:00

(休業の場合は随時お知らせがあります)

オンラインショップリンク:https://reartsgarden.myshopify.com/

SNSリンク:

https://mobile.twitter.com/reartsgarden

https://www.instagram.com/re_arts_garden/

 

 

TEXT くりはるまき