2021/07/15

街角の立ち話/丸善魚店ののどくろ

入るのに少し勇気がいる外観を中へ入ると、青果店、生花店、魚屋に最近開店した韓国料理惣菜店が並ぶ。どこも店主一人でやっているこじんまりした店が入った雑居ビルの一階のスーパー。

 

 

そのスーパーの惣菜店の隣に丸善魚店はある。刺し身の入った冷蔵ケースの外には、発泡スチロールの箱に氷を敷き詰めてた上に、青みがかった銀色やほんのり赤い体を覆うウロコを光らせた魚が一匹ごと並べられている。

 

 

魚の品定めをしながら、なんとなく気になって店主にいつから店をやっているのか聞いた。店の裏に桜があったこと、カネボウ練馬工場の女子寮があったこと、隣には八百屋や肉屋や寿司屋などが並んでいた当時の光景を話してくれた。あくまで商人らしいさっぱりした口調でただ最後の方に疲れと寂しさが滲んでいるように聞こえた。

 

 

 

いまは映画館がバスターミナルだった頃から半世紀の間ここから通りを見てきた。人の記憶のなかの風景は誰かの話し声や匂いのような数秒の出来事が重なりあう時間を含んだ重層的なイメージで浮かび上がるものなのかもしれない。数あるピースからどれを拾い出すか、その編集作業をしているのは感情でだから多少バランスが悪くても生き生きとして温もりのある手書きの字のような手触りが記憶にはある。店主の話はそんなことを思わせるなにかがあった。

 

 

なにわともあれ、今こうして魚を買うのも、買い物の光景はたぶん昔とだいたい同じだろう。店主の声はキビキビと小気味良いリズムで心地よく耳に入ってくる。
旬の魚とか教えてもらったり、色々な魚のなかから選ぶのを手伝ってくれるから魚にも詳しくなれそうだ。高級魚ののどくろとかもありますよ。